Vermilion::text 17階回廊 その一 ベータ「果ての無い道」

ここ-Vermilionにきてから幾日経ったのだろう。ある階層では鬱蒼と茂った森のようなところだった。そこでは老婆に「上へ進みなさい。この果てを見なさい」と言葉を与えられた。ある階層はまるで砂漠の様な乾ききったところだった。そこでは妖艶な美女に「上に進んだって何もない。ここから出るのが最善の策だ」と言葉を与えられた。私が選んだ道は「ひたすら上に進む」道だ。
その日、あまりの空腹感(よくよく考えると3日あまり何も口にしていなかった)によって階段を登りきったその場にへたり込んでしまった。目の前の壁に目をやると「17」と書かれた小さな札がかかっていた。まだ17階か。疲れかはたまた憂いか。大きくため息をつく。ひたすら進む道を選んだ自分は間違っていたのか。そんなことを思いながら物思いに更けていた。どこからか風が入ってくるのか、札は風に身を任せカタカタと揺れている。その風にのっていい匂い・・・食べ物の匂い・・・食べ物!?はっと我に帰る。最後の力を振り絞って立ち上がり壁で自らを支えながらその根源へと歩み寄る・・・長く続く回廊は緩やかにカーブを描いている。その先は暗く良く見えない。しばらく進むと人の気配を感じた。「17-1」と書かれた札が下がる扉の奥が根源のようだ。少しだけ開いた扉からは光が射し、なにやら会話が聞こえてくる・・・うまく聞き取れない。聞き取ろうと前屈みになるものの踏ん張ることが出来ず前のめりに倒れこんだ。どさっという音とともに扉はそのほんの少しの風圧で完全に開いた。「お父さん、しらない人がいる」「大丈夫ですか・・・?」「聞こえてますか?」複数の声の主達の方へ顔をあげる。その視界にはどこにでもいそうな一家-父母に娘一人が私を心配そうに見てる様がうつっていた。「すみません・・・いきなりなんですが・・・とりあえずなにか食べ物を。」