Vermilion::text 「回転舞台」 215F

今日も幕が開く。

その幕の分の台本を受け取った。時間にして約12時間分。注意する事はいたって自然に振舞う事。さもそこで生活が営まれているような風に。
次の幕が引くと同時に私達の演目が始まる。前の演目の出演者とは会ったことが無い。それは逆も然り。
幕が開く12時間前に私達に台本が配られる。そして随時ト書きが追加されていく。台本を全て自分のモノにする事、それは時間との戦い。
出演者は何時も代わり映えしない面子である。父に母に兄に妹。大分前の公演で祖父を演じる人が死んだ。死ぬ役だ。その瞬間演じる人は微動だにしなかった。
直前まで嗚咽が出るほど憶えた台詞を吐く為に舞台へ登る。バミリされた立ち位置に立つ。ゆっくり舞台が回転していく。


私達の生活の始まりだ。今日は私の夫となる役を演じる人が来る。