Vermilion::text 128階 永遠の闘技場 「Missing Creature」(6)

小型のワーム4体はなんて事無いタダのワームであった。「なんてことないじゃーん♪」ヒサメは鼻歌を歌いながら進む。「しかし、なぁ・・・。」ヴォーザは浮かない顔をしていた。「あの部隊が言っていたことが本当となると、我々とて全滅しかねないぞ。」そう、先ほどの話である。あの部隊---ワームを片付けたあと遭遇した部隊は茜を見つけるとあわてて駆け寄った。「あっちで1部隊全滅してやがる。情報どおり右手だけが・・・。」


どうやら既に何部隊か全滅しているようだ。右手だけ残して。「・・・いざというときのために速度増加魔法掛けますね。」シャナは短い詠唱のあと速度増加の魔法を掛けた。「このあたりはなんかいやな空気が流れています。・・・やっぱりあるったけの補助魔法掛けます。」風景は特に問題が無い。小川が流れ、ややひらけている場所である。流れる空気が何か違う。「気配は無いが、嫌な予感はするな。」クロハネもダガーを握りなおし意識を集中させる。

ふと視界に一人の少女が目に入った。白いワンピース、ウェーブがかったブロンド、青い目。「ん?」最初に気づいたのはヴォーザだった。「あんなところに女の子が。」「おかしい・・・あんな少女は見た事が無い。」茜は鞘から刀を抜く。そして異変。気づいたのはクロハネである。「空間が歪む!全員耐衝撃!」ずん、と鈍く重い何かに押さえつけられそうな感覚。瞬間。「防御壁展開!」「炎ぶっ放すわよ!」シャナとヒサメの魔法が飛ぶ。上方から来た「何か」を壁が防ぎ炎が焼き尽くす。「やばいぞ、こりゃ。」「多分アレが・・・ゴッゴルですよね。」「見た目あんなにかわいいのにっ!」「写真とりまくっておけよ!」歪みが収まり攻撃が止む。茜が少女へ歩み寄る。茜に向けて「何か」が捕らえようと動く。茜はそれを切り進む。少女が怯えた顔になる。泣きそうになればなるほど攻撃が激しくなっているようだった。見えない何かに斬られ茜の白い肌から血が流れる。「所謂防御反応ですね・・・。」シャナは茜に向けて必死に回復魔法を唱える。「あんまり回復魔法ばっかし唱えさせるなよー。あとでぶっ放せないじゃない!」ヒサメもシャナとともに茜に向けて回復魔法を唱える。クロハネとヴォーザはただ見守るしかできなかった。下手に手を出したら死ぬ。直感が己を踏みとどまらせた。

「お前が、そうか。」少女は答えない。「この塔の魔力が生み出したモノか。今の我々には邪魔以外の理由が無い。願わくば消えてもらいたい。」少女は顔を上げ茜を見つめる。口を開く。

「みんな、わたし、こわいっていうの。だから、みんな、たべたの。いけないの。だめなの。とめられないの。わたしを、とめて。」

少女の願い。聞き終えた茜の刀が弧を描く。

「南無三。」クロハネは小さくつぶやいた。